押さえておくべき視点


姫はどうじゃ?

軒先の簾、廚子の上の御仏、――それももうどうしたかわかりません。わたしはとうとう御話半ばに、その場へ泣き沈んでしまいました。御主人は始終黙然と、御耳を傾けていらしったようです。が、姫君の事を御聞きになると、突然さも御心配そうに、法衣の膝を御寄せになりました。「姫はどうじゃ? 伯母御前にはようなついているか?」「はい。御睦しいように存じました。」 わたしは泣く泣く俊寛様へ、姫君の御消息をさし上げました。それはこの島へ渡るものには、門司や赤間が関を船出する時、やかましい詮議があるそうですから、髻に隠して来た御文なのです。御主人は早速燈台の光に、御消息をおひろげなさりながら、ところどころ小声に御読みになりました。モンターニュ 効果
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