押さえておくべき視点


大きい息をおつきになりました

「……世の中かきくらして晴るる心地なく侍り。……さても三人一つ島に流されけるに、……などや御身一人残り止まり給うらんと、……都には草のゆかりも枯れはてて、……当時は奈良の伯母御前の御許に侍り。……おろそかなるべき事にはあらねど、かすかなる住居推し量り給え。……さてもこの三とせまで、いかに御心強く、有とも無とも承わらざるらん。……とくとく御上り候え。恋しとも恋し。ゆかしともゆかし。……あなかしこ、あなかしこ。……」 俊寛様は御文を御置きになると、じっと腕組みをなすったまま、大きい息をおつきになりました。「姫はもう十二になった筈じゃな。――おれも都には未練はないが、姫にだけは一目会いたい。」 わたしは御心中を思いやりながら、ただ涙ばかり拭っていました。モンターニュ 効果
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