押さえておくべき視点


前髪がふっくり揺れて

前髪がふっくり揺れて…差俯向く。「本望どすな。」 と莞爾して、急に上げた瓜核顔が、差向いに軽く仰向いた、眉の和やかさを見た目には、擬宝珠が花の雲に乗り、霞がほんのりと縁を包んで、欄干が遠く見えてぼうとなった。その霞に浮いて、ただ御堂の白い中に、未開紅なる唇が夜露を含んで咲こうとする。……「あれえ。」 声を絞ると、擬宝珠の上に、円髷が空ざまに振られつつ、「蛇が、蛇が。」「何、蛇が。」「赤い蛇が。」 赤い蛇は、褄の乱れた、きみの裾のほかにあるものか。「膝が震えて、足が縮む……動けば落ちようし、どないしよう。」 と欄干に、わなわな。「今時蛇が、こんな処へ。……不忍の池には白いのがいるというが。」 と、わざと落着いたが、足もとはうろつきながら、外套の袖で、背後状にお絹を囲った。「額の、額の。」 ああ、幽に見ゆる観世音の額の金色と、中を劃って、霞の畳まる、横広い一面の額の隙間から、一条たらりと下っていた。「紐だ、紐ですよ。何かの。」 勇を示して、示しついでに、ぐい、と引くと、「あれ、……白い顔。」 声とともに、くなりと膝をついたお絹が、背後から腰につかまった。  医学 ブログ 医学英文校正・医学翻訳のご相談は|医学翻訳会社「JMC」
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