押さえておくべき視点


すると籠は、花ながら花の中に埋もれて消えた

すると籠は、花ながら花の中に埋もれて消えた。 月影が射したから、伏拝んで、心を籠めて、透かし透かし見たけれども、※したけれども、見遣ったけれども、ものの薫に形あって仄に幻かと見ゆるばかり、雲も雪も紫も偏に夜の色に紛るるのみ。 殆ど絶望して倒れようとした時、思い懸けず見ると、肩を並べて斉しく手を合せてすらりと立った、その黒髪の花唯一輪、紅なりけり月の光に。 高坂がその足許に平伏したのは言うまでもなかった。 その時肩を落して、美女が手を取ると、取られて膝をずらして縋着いて、その帯のあたりに面を上げたのを、月を浴びて※長けた、優しい顔で熟と見て、少し頬を傾けると、髪がそちらへはらはらとなるのを、密と押える手に、簪を抜いて、戦く医学生の襟に挟んで、恍惚したが、瞳が動き、「ああ、お可懐い。思うお方の御病気はきっとそれで治ります。」 あわれ、高坂が緊乎と留めた手は徒に茎を掴んで、袂は空に、美女ヶ原は咲満ちたまま、ゆらゆらと前へ出たように覚えて、人の姿は遠くなった。 立って追おうとすると、岩に牡丹の咲重って、白き象の大なる頭の如き頂へ、雲に入るよう衝と立った時、一度その鮮明な眉が見えたが、月に風なき野となんぬ。 高坂は※と坐した。 かくて胸なる紅の一輪を栞に、傍の芍薬の花、方一尺なるに経を据えて、合掌して、薬王品を夜もすがら。フラワースクール 東京 オランダのフラワーアレンジメントを学びたい、国家認定資格「DFA」を取得 ...
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