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まあ、兩方でさう赤め合つても仕方があるまい

花園 まあ、兩方でさう赤め合つても仕方があるまい。この奧に何がゐるか居ないかは、襖をあけてみれば判ることぢや。良因、念のために明けてみやれ。 良因 (わざと逡巡して。)いえ、それはまつぴら御免下さいまし。花園 まだ怖いか。良因 なんだかまだ不安心でございます。どうかあなた御自身で……。花園 いや、わしも御免ぢや。加賀 誰だつて氣味が惡うございますわ。たしかに變なものがゐるに違ひないんですもの。正親 (いよ/\怒る。)まだ私を疑つてゐるのか。いよ/\以て怪しからぬことぢや。さう云ふこなたこそ鬼か惡魔ぢや。加賀 え、なんですつて……。わたしが鬼か惡魔ですつて……。正親 おゝ、此頃の女子は惡魔よりもおそろしいと、師匠の晴明どのが常々申されてゐるわ。良因 なるほど、その占ひはよく中つてゐるかも知れない。(笑ふ。)加賀 ひとを馬鹿におしなさるな。なんでわたしが惡魔ですよ。(詰め寄る。)正親 神の御告をあざける徒は惡魔も同然ぢや。退れ、すされ。(御幣にて加賀を打つ。)加賀 おや、わたしを打ちましたね。正親 かうして惡魔を攘ふのぢや。(又打つ。)加賀 わたしを狐だとでも思つてゐるんですか。もう堪忍ができませんよ。 (加賀は正親の御幣を奪ひ取りて、あべこべに打つ。正親の烏帽子落ちる。正親怒つて御幣をうばひ返さんとし、たがひに挑み爭ふ。)遺品整理 大阪 悩める遺品整理お任せサイト
 
良因 (わざと逡巡して。)いえ、それはまつぴら御免下さいまし。
花園 まだ怖いか。
良因 なんだかまだ不安心でございます。どうかあなた御自身で……。
花園 いや、わしも御免ぢや。
加賀 誰だつて氣味が惡うございますわ。たしかに變なものがゐるに違ひないんですもの。
正親 (いよ/\怒る。)まだ私を疑つてゐるのか。いよ/\以て怪しからぬことぢや。さう云ふこなたこそ鬼か惡魔ぢや。
加賀 え、なんですつて……。わたしが鬼か惡魔ですつて……。
正親 おゝ、此頃の女子は惡魔よりもおそろしいと、師匠の晴明どのが常々申されてゐるわ。
良因 なるほど、その占ひはよく中つてゐるかも知れない。(笑ふ。)
加賀 ひとを馬鹿におしなさるな。なんでわたしが惡魔ですよ。(詰め寄る。)
正親 神の御告をあざける徒は惡魔も同然ぢや。退れ、すされ。(御幣にて加賀を打つ。)
加賀 おや、わたしを打ちましたね。
正親 かうして惡魔を攘ふのぢや。(又打つ。)
加賀 わたしを狐だとでも思つてゐるんですか。もう堪忍ができませんよ。
 
(加賀は正親の御幣を奪ひ取りて、あべこべに打つ。正親の烏帽子落ちる。正親怒つて御幣をうばひ返さんとし、たがひに挑み爭ふ。)
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