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朝風の動き初めたのである

――朝風の動き初めたのである。と、巨人は其被て居る金色の雲を断り断つて、昔ツオイスの神が身を化した様な、黄金の雨を二人の上に降らせ始めた。嗚呼、嗚呼、幾千万片と数の知れぬ金地の舞の小扇が、縺れつ解けつヒラ/\と、二人の身をも埋むる許り。或ものは又、見えざる糸に吊らるる如く、枝に返らず地に落ちず、光ある風に身を揉ませて居る。空に葉の舞、地の人の舞! 之を見るもの、上なるを高しとせざるべく、下なるを卑しとせざるべし。黄金の葉は天上の舞を舞ふて地に落つるのだ。狂人繁と狂女お夏とは神の御庭に地上の舞を舞ふて居るのだ。  突如、梵天の大光明が、七彩赫灼の耀を以て、世界開発の曙の如く、人天三界を照破した。先づ、雲に隠れた巨人の頭を染め、ついで、其金色の衣を目も眩く許に彩り、軈て、普ねく地上の物又物を照し出した。朝日が山の端を離れたのである。

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