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惚れたーアー惚れたーのーオ

『惚れたーアー惚れたーのーオ、若松様アよーオー、ハア惚れたよーツ。』 『ハア惚れた惚れた惚れたよやさー。』 と繁が次いだ。二人の天の寵児が測り難き全智の天に謝する衷心の祈祷は、実に此の外に無いのであらう。  電光の如く湧いて自分の両眼に立ち塞がつた光景は、宛然幾千万片の黄金の葉が、さといふ音もなく一時に散り果てたかの様に、一瞬にして消えた。が此一瞬は、自分にとつて極めて大切なる一瞬であつた。自分は此一瞬に、目前に起つて居る出来事の一切を、よく/\解釈することが出来た。  疾風の如く棺に取縋つたお夏が、蹴られてどうと倒れた時、懐の赤児が『ギヤツ』と許り烈しい悲鳴を上げた。そして此悲鳴が唯一声であつた。自分は飛び上る程喫驚した。ああ、あの赤児は、つぶされて死んだのではあるまいか。………… (以下続出) 〔「明星」明治三十九年十二月号〕

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