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第二の柱時計

 第二の柱時計は、続いて、ぼうん、ぼうんと鳴りつづける。そうして、ついに八時をうってしまった。
 その時、何思ったか新田先生は、後を向いた。
「おお、千二君。よく注意しているかね。さあ、この次は、いよいよ問題の九時をうたせるから、君は、おへそに、うんと力を入れておいでよ、ね」
 千二は、返事をするかわりに、無言でうなずいた。
「さあ、いよいよ始るぞ。九時をうたせても、鼠一匹出て来なければ、ことごとく先生の失敗に終る!」
 荒鷲の巣へしのびよって、巣の中の卵へ、いよいよ手を、にゅっとのばした猟師のように、新田先生の顔は、一生けんめいな気持で真赤になっていた。
 ぼうん、ぼうん、ぼうん……
 いよいよ柱時計は九時をうち出した。
 すると、新田先生は、急に、梯子から、どかどかと下りた。そうして、時計の下の壁ぎわにぴったりと体をよせ、なおも鳴りひびく怪時計の音に、注意ぶかく聞入った。
 ぼうん! ついに時計は、九時をうち終った。
 その時、柱時計の下で、壁にぴったりと、からだをよせている新田先生のはげしい興奮の顔!
 また入口の扉を背にして、何事が起るかと、目をみはっている千二少年の顔!
 ぎいーっ、ぎいーっ。
 床下にあたって、歯車か何かが、きしる音!
「ううむ……」
 と、新田先生はうなった。
 ぎいーっ、ぎいーっ。
「あっ、床が……」
 千二は、思わず驚きの声をあげた。
 
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