2012年09月22日 00:06:41
ヘリコプターは、いよいよ近くに迫っていた。
信号灯か標識灯かしらないが、色電灯がついているのが見える。 春木は、首をちぢめて、塀のかげにとびこんだ。二十日あまりの月明かりであった。姿を見られやすいから、行動は楽でない。 彼はヘリコプターから見つけられないようにと、塀づたいに夜の町をぬって、山手へ逃げた。 二百メートルばかりいくと、そこから向こうは急に高く崖になっていた。崖の上には稲荷神社の祠があった。このごろのこととて屋根はやぶれ軒は傾き、誰も番をしていない祠だった。春木は、その石段をのぼることをわざとさけ、横の方についている草にうずもれた急な小道をのぼっていった。もちろん姿を見られないためだった。 崖の上にのぼりついて、彼はほっとした。ここなら、まず、大丈夫である。 というのは、ここは山の裾で、ひどい傾斜になっている。稲荷神社のまわりには、古い大きい木がぎっしりとり囲んでいて、枝がはりだして隙間のないほどだ。それに境内もごくせまい。ここなら、ヘリコプターが下りてこようとしても、翼が山の木にさわって、とてもうまくいかないであろう。春木は、そういう推理にもとづいて、崖の上のお稲荷さんへかけあがったのである。 Hotels.comのクーポン Hotels.com アカウントを作成、管理、閉鎖するにはどうすればよいですか
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