2012年09月22日 00:08:55
その小さい影は、ある一軒の家の石段にあがりかけた。とあとの群が、その小さな影の上に重なった。
人影の群は、ふたたび前のように、岸の上を上流に向って歩きだした。彼らは固まっていた。
そして小さい影は、彼らの頭の上にかつがれているらしかった。
春木は、このとき、どきんとした。
「あ、あの家は牛丸君の家だ。……すると、もしや。あの小さい人影は、牛丸君ではなかったか」
はっきりした理由は分らないけれど、牛丸君も自分も、この間からヘリコプターの賊と因縁がついて、なんだかいつも睨まれているような気がしてならなかった。
だから春木は、すぐ牛丸君が誘拐されていると、かんづいたわけである。そしてそれはほんとうに正しい観察であった。
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