2012年10月15日 11:06:49
私は、夢を見ているのではなかろうかと疑った。
至極古い方法であるが、私は、震える指先で自分の頬をつねった。
(痛い!)
痛ければ、これは夢ではない。いや、そんなことを試みてみないでも、これが夢でないことは、よく分っていたのだ。
夢でないとすれば――近づくあの足音の主は、誰であろうか?
絶対不可侵を誇っていたクロクロ島に、私の予期しなかった人物が、いつの間にか潜入していたとは、全くおどろいたことである。そんな筈はないのだが……。
だが、足音は、ゆっくりゆっくり、階段を下りてくる。私の体は、昂奮のため、火のように熱くなった。
こっとン、こっとン、こっとン!
ついに、階段下で、その足音は停った。
ついで、扉のハンドルが、ぐるっと廻った。
(いよいよ、この室へはいってくるぞ!)
何者かしらないが、はいって来られてはたまらない。私は、扉を内側から抑えようと思って立ち上ろうとした。
だが私は、体の自由を失っていた。
上半身を起そうと思って、床を両手で突っ張ったが、私の肩は、床の上に癒着せられたように動かなかった。
「畜生!」
私は思わずうめいた。うめいても、所詮、だめなものはだめであった。
「あまり、無理なことをしないがいいよ」
とつぜん私の頭の上で、太い声がした。
(あっ、彼奴の声だ。怪しい闖入者の声だ!)
私は歯をくいしばった。
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