2012年12月27日 03:46:30
彼は最初に目指されただけに、傷は二ヵ所で、又その撲ちどころも悪かったので、まぶたも唇も腫れあがっていた。
主人が災難とあきらめているので、義助もよんどころなく我慢したが、主従三人が揃いも揃ってこんな目に逢うのは、あまりに忌々しいと思った。 店の女たちにきいてみると、あのお安という気違いじみた女は、藤沢在に住んでいる伝八という百姓のうちに寄留して、近所の子供や若い衆に浄瑠璃などを教えている、伝八の女房の姪だということで、以前は江戸に住んでいたが、去年の春ごろからここへ引っ込んで来たのである。ことしのお開帳を当て込みに、自分が心棒になって休み茶屋をはじめ、近所の娘を手伝いに頼んでいるが、主人が江戸者で客あつかいに馴れているので、なかなか繁昌するという。お安が雇い人であれば、その主人に掛合うというすべもあるが、本人が主人では苦情を持ち込む相手がない。義助もまったく諦めるのほかはなかった。
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