2013年03月07日 01:47:09
「夜ふけに伺いまして、だしぬけにこんなことを申し上げるのも異《い》なものでございますが、
わたくしはこの御近所に居りますもので、昨晩不思議な夢を見ましたのでございます」
「はあ」と、お徳も不思議そうに相手をいよいよ見つめた。思いも付かないことを云い出されて、かれは少しく煙《けむ》にまかれたのであった。
「ひとりの男……むらさきの着物を被《き》て、冠《かんむり》をかぶった上品な人でございました。それがわたくしの枕もとへ参りまして、自分の命はきょう翌日《あす》に迫っている。どうぞあなたの力で救っていただきたいと、こう申すのでございます。そこで、一体あなたは何処のお方ですかと訊きますと、わたくしは無量寺門前の草履屋《ぞうりや》の藤吉という人の家《うち》にいる。そこへお出でになれば自然にわかると、云うかと思うと夢が醒めました。なにぶんにも夢のことでございますから、そのままにして置きましたのですが、夜になって考えますと、なんだか気にもなりますので、とうとう思い切って今時分に伺いましたようなわけでございますが……」オプトインアフィリエイト 無料オファー 無料オファーASP比較&一覧
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