2012年06月27日 20:22:21
白雪 姥、嬉しいな。
一同 お姫様。(と諸声凄し。)
白雪 人間は?
姥 皆、魚に。早や泳いでおります。田螺、鰌も見えまする。
一同 (哄と笑う)ははははははは。
白雪 この新しい鐘ヶ淵は、御夫婦の住居にしょう。皆おいで。私は剣ヶ峰へ行くよ。……もうゆきかよいは思いのまま。お百合さん、お百合さん、一所に唄をうたいましょうね。
たちまちまた暗し。既にして巨鐘水にあり。晃、お百合と二人、晃は、竜頭に頬杖つき、お百合は下に、水に裳をひいて、うしろに反らして手を支き、打仰いで、熟と顔を見合せ莞爾と笑む。
時に月の光煌々たり。
学円、高く一人鐘楼に佇み、水に臨んで、一揖し、合掌す。
月いよいよ明なり。
(――幕)
大正二(一九一三)年三月
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