2012年05月13日 14:14:36
将来の仕事も生活もどうなってゆくかわからないような彼は、この冴えに冴えた秋の夜の底にひたりながら、言いようのない孤独に攻めつけられてしまった。 物音に驚いて眼をさました時には、父はもう隣の部屋で茶を啜っているらしかった。その朝も晴れ切った朝だった。彼が起き上がって縁に出ると、それを窺っていたように内儀さんが出て来て、忙しくぐるりの雨戸を開け放った。新鮮な朝の空気と共に、田園に特有な生き生きとした匂いが部屋じゅうにみなぎった。父は捨てどころに困じて口の中に啣んでいた梅干の種を勢いよくグーズベリーの繁みに放りなげた。 監督は矢部の出迎えに出かけて留守だったが、父の膝許には、もうたくさんの帳簿や書類が雑然と開きならべられてあった。
東京 相続 弁護士 遺産相続の手続き相談所 -みお綜合法律事務所-
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